淡中 圏の脳髄(永遠に工事中)

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The best way to predict the future is to invent it

かなえられた祈り

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かなえられた祈り

 腹立ちを紛らすためにシャンプーの蛇口(あれを蛇口と呼ぶべきなのかどうかは議論の余地があるが、フラミンゴと呼んでも他人に通じそうにないので蛇口と呼んでおく)をシャコシャコやっていたところ、魔人が出てきた。これが特殊な経験なのかどうなのか、情報が少なすぎて私には判断しかねたので、友人に尋ねてみたところ、「それくらい能登じゃ常識だ。下らないことで呼ぶな!」とプンスカ怒りながらリンスの入れ物の中に消えていった。忙しい男だ。

 「フハハハハ!!!? わしは、地球環境を保護すべく、シャンプーの使いすぎを防ぐためにシャンプーの入れ物の中に混入されたランプの魔人!!!? こうなってしまっては仕方ない!!!? お前の願いを三つだけかなえてやろう!!!?」

 すべての文章の語尾が少しずつ上がっている!!!? もしかしたら、日本語が少し不自由なのかもしれない。

 「すみませんが、髪の毛洗うまで待っててくれませんか。シャンプーしてるとき眼開けるの苦手なんです」

 と私が言うと、

 「フハハハハ!!!? それがお前の願いか!!!? お前の願いは聞き届けられた!!!?」

 と魔人が答えるので、私は「待っててくれるんだ」と少しほっとする。こんな親切な魔人を待たせては悪いなと急いでシャワーで泡を流そうとするが、いくらやっても泡が出続ける。おかしいなと思って、目にしみるのを賢明に我慢して、鏡を見ると原因が分かる。

 「すみませんが、シャンプーで泡を足し続ける悪戯を止めてはくれないでしょうか。正直言ってシャンプーがもったいないですし」

 と嘆願すると、

 「フハハハハ!!!? それがお前の願いか!!!? お前の願いは聞き届けられた!!!?」

 と魔人が答えるので、私は「聞き分けのいい人で良かった」とほっとする。この前洗濯機から出てきた湖の妖精とは大違いだ。

 こうしてようやく私が願い事を言う準備が整う。

 「それではお前の最後の願いを言ってもらおうか!!!?」

 私は深い満足感とともにその言葉を聞く。すべてはこのための準備だったのだ。もし前の一つ目の願い事を言わなければ、魔人は私が髪を洗い終えるまで待ってくれなかったろうし、二つ目の願い事を言わなければ、私は未来永劫永遠に髪を洗い続けることになっていただろう。一見無駄に見えるものにもすべて意味があるのだ。洋式トイレの蓋とか、爪楊枝の溝とか、キャラメルコーンのピーナッツとか。

 私は両手を高く、天に向けて掲げながら宣言した。

 「世界に甘美な混沌を!」

 それを聞いて魔人は

 「裸でかっこつけられても困るなあ!!!?」

 と両方の手で両方の鼻の穴をほじくりながら言った。しかも交差して。見たことのない風習なので、やはり外国人なのかも知れない。

 「まあ、いいか? それではお前の願いは聞き届けられた!!!? 今より世界は甘美な混沌に陥るだろう!!!? チチンプイプイ!? アジャラカモクレン、アルジェリア、テケレッツノパ!?」

 魔人は「おめえ、ここおかしいんじゃねえの?」という風に頭の上で人差し指を渦巻き型に回した。恐らくそれが魔法のジェスチャーなのだろう。

 私は変化を待ったが、特になにも起こらなかった。もしかしたら、私が願うまでもなく、この世界は甘美な混沌に包まれていたのかもしれない。しかし不思議と、無駄なことをしたという後悔は起こらなかった。私にとって自分の願いが無駄になったかどうかなんてどうでもいいことなのだ。それよりも重要なのは、この世界が甘美な混沌に浸食され、犯されきることで、それ以外のことは全て小さいことなのだ。

 「さて、これですべての願いがかなえられたが、お前は満足か?」

 魔人が訊く。私は、

 「ああ、何やら不思議な満足感に包まれているよ。ちょうど、その日のうちに書かなければいけないレポートがあったのに、一晩かけて小説を書いていた学生が、バイクを飛ばして最高の場所で日の出を拝んでいるみたいな気分だよ。バイク嫌いだけど」

 と言う。

 ところがそれを聞いた魔人の様子がおかしい。くくく、と笑いをこらえているようだ。そしてすぐに我慢しきれなくなって、大笑いし始める。それは人間離れしていて、言いかえるならまるで人間じゃないみたいで、別の言葉で言うと、魔人めいた笑いだった。

 「ハハハハハ!!!? まんまと騙されたな!?」

 と笑いながら叫ぶ。私は驚いて、

 「なんの話だ?」

 と叫び返す。すると魔人は、

 「実は願い事は四つだったのだぁ!!!?」

 と驚愕の真実を開陳した。

 「だあまされた、だまされた!!!?」

 と魔人は囃し立てながら砂浜を夕日に向かって走っていく。私は置いてかれまいと、その後を追って走り出すしかしようがない。

 「こら、待てえ!」

 「へへーん、待たないよおだ!!!?」

 あっかんべえしながら走り去っていく魔人。その後を必死になっておっていく私。そして画面にかぶさるように合成される、素人の3DCGみたいな、「終わり」の文字。

 こうして、すばらしい一日が終わり、そして新しい一日が次に控えているのだ。その日も心躍る新しい発見や人と人との心の触れ合いに溢れたすばらしい一日でありますように。

解説

適当に描いた作品ばかりだな。

能登の知り合いは実在し、そいつの「能登には見付島という島があり、見つけられたから見付島というのだが、見つけないことが不可能なほどすぐ近くにある」とか「すべての小学校に土俵があり、相撲部だと小学生でも商店街でツケで買い物ができた」みたいな話を楽しく聞いていて、その話を私は「能登オンリー・バットオールソー話」と呼んでいた。

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