淡中 圏の脳髄(永遠に工事中)

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Πάντα ῥεῖ

水平線なんかぶっ飛ばせ

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水平線なんかぶっ飛ばせ

 むかしむかし、恐竜は便秘で滅びたという説があったが、川瀬は便秘で滅びた。

 川瀬の葬式でおれたちはおいおい泣いた。便秘なら便秘といってくれたらよかったのに。日々、巨大化していく川瀬を見て、どうしておれたちは何も気づいてやれなかったのか。

 その二年後、町を歩いてる川瀬を見かけた。「オイ、川瀬じゃないか」おれたちは後ろから声をかけた。しかしやつは振り返らない。記憶喪失か?友達としては放っておけない。おれたちは懐から鉄パイプを取り出し、あいつの頭をぶん殴った。もう一度。川瀬は抵抗した。なかなかおれたちのことを思い出さない。もし最後までおれたちのことを思い出さなかったら、こいつは川瀬じゃないのかも知れないが、もし川瀬じゃなくても、殴ってればそのうちおれたちのことを思い出すかもしれない。

 気が付くと、パトカーがおれたちを囲んでいた。ちっ、ポリ公め、国家の犬が。おれたちは走り出した、明日に向かって。乱舞するサーチライト、たけり狂うサイレン、飛び交う鉛の銃弾。だがおれたちの疾走は速く、おれたちの跳躍は高い。おれたちはノマド(遊牧民)、生まれながらの越境者だ、だれにも捕まえられはしない。

解説

中原昌也の小説みたいな感じにしようと思って書いた。

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