親切
はるかな未来、人類はとっくの昔に食い合わせの悪いものを食べて滅びていた。ところがそんなある日、いつもと変わらない日曜日に、無人の荒野に巨大な空飛ぶ円盤が着陸した。はるか彼方、遠い宇宙の深遠からやってきた知的生物たちである。発掘調査の結果、かつてこの星に高度な科学文明が繁栄していたことを知った彼らは、有難迷惑にも人類を再現することにした。
だが、残っていた人類の姿に関する資料が、アメリカの首振り人形だけだったために、復元後の人類は、頭が大きすぎて首がすわらず、歩くたびにガクガク顔が揺れることになったのであった。あと、顔の再現性も微妙なものが多い。
そんなこととも露知らず、その知的生物たちの長はご満悦で、この星を去っていこうとしていた。しかし、出発の直前、ギリギリになって帰ってきた、着陸位置から離れた場所への調査隊がとんでもない物を持ち帰ったのである。
「大変です、こんな物を発見してしまいました」
そしてその物体が今、長の目の前に置かれた。
「こ、これは!」
それはロシアのマトリョーシカ人形であった。10層構造の大きなもので、最上層はプーチンで、その下にはエリツィンやフルシチョフ、ブレジネフ、スターリン、レーニン、イワン雷帝など歴代の独裁者達が控えている。
「人類とはいったいどんな生物だったというのか?」