淡中 圏の脳髄(永遠に工事中)

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And now, for something completely different

脳移植であなたも素敵に変身できる?

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脳移植であなたも素敵に変身できる?

「あれえ、Calabi-Yau的三角圏でのクラスター傾斜理論がよくわからないや」

「デリダの差延って何だっけ? グラマトロジーとどう関係してるんだっけ?」

「チキチキマシン猛レースの十番のトロッコスペシャルに乗ってるあのビーバーと一緒にいるやつ誰だっけ?」

物覚えが悪い、理解力が足りない、頭が悪くて困っている。そんなあなたに朗報です!

知力の悩みを一気に解決! 脳移植をお勧めします!

あなたの、無駄が多く効率の悪い脳と、当社が自身を持って提供する特別製の脳とを思い切って交換しませんか?

全国ですでに千人以上が脳移植を試しているのです。脳移植で頭をすっきりさせた人の喜びの声を聞いて見ましょう!

「こんなにはっきりと思考できるなんて驚きです。脳移植しなかったら、バベルの塔以前の言語を修復するという、私のプロジェクトは絶対に成功しなかったでしょう」(男性・七十歳・無職)

「脳移植のおかげで、チューリングマシンの停止問題を解くアルゴリズムを見つけることができました。次は角の三等分を利用した、神のアプリオリな存在証明に取り組んでいます」(男性・八歳・小学生)

「語学が苦手だった私も脳移植のおかげで、ほら、『フィネガンズ・ウェイク』も幻語でぺらぺら、今では日常でも英知思惟良いたるfin&againの幻語で呟語するwake&death」(女性・二十五歳・バスガイド)

もちろん、脳移植が役に立つのは、頭がよくなりたい人たちだけではありません。人間関係に悩んだり、モテないことを気に病んでいる人たちにも脳移植はお勧めです。通常の手段ではなかなかうまくいかない性格の問題も、脳移植なら簡単に解決してしまいます。こちらもたくさんの反響が来ています。

「脳移植をする前は、ネクラでオタクで人前に出るとアニメの話以外うまくしゃべれなかった僕だけど、脳移植をしてからは、ハリウッドの大作映画やトレンディドラマも前より面白く感じられるようになって話題にも困らなくなったし、生身の女性にも興味が持てるようになって、友達もできたし彼女もできました。こんな幸せはありません」(男性・二十一歳・大学生)

「お医者さんの勧めで脳移植する前は、小学生の女の子にしか興味がもてませんでしたが、いまでは二十台の女性ともお付き合いができそうです。僕が真人間になれたのは脳移植のおかげです」(男性・三十歳・工場勤務)

「前は国家の欺瞞が許せなくて、何か気に食わないことがあると爆弾を送りつけたり、炭疽菌を培養したりしていましたが、警察の人たちから脳移植するように勧められまして、いまではほどほどなあなあの日本的感覚を身につけることができて、ずいぶん生きやすくなりました。今までの自分がどれだけ突っ張って自分を追い込んでいたかが、今になってよくわかります。本当に感謝しています」(女性・二十三歳・家事手伝い)

さらに脳移植に満足しているのは、ご本人様だけではないのです。その影響は回りの人たちにも及んでいるのです。

「熊耳さんたら脳移植してから、まるで人が変わったようなのよ。ほんとに素敵な方になって。私もやってみようかしらね」(女性・四十二歳・主婦)

「うちの亭主も以前は酒癖は悪いし、仕事はできないし、話は面白くないし、まるでいいとこなかったんだけど、先月ほとんど無理やり脳移植を受けさしたらこれがもう効果覿面! 会社も昇進するし、家での会話も弾むし、それに何よりやさしくなって、お酒タバコだってあっという間にやめちゃったんだから。まるで、新婚が帰ってきたみたいで、夜の生活も戻ってきてね。もうほんと、脳移植さまさまよ」(女性・三十四歳・パート)

当社が使用している脳は、最新のバイオテクノロジーにより純粋培養した、一級品! それをお客様のニーズに合わせてカスタマイズしたものを、最新の医療スタッフが安全第一に移植させていただきます。

今なら、カスタマイズ、移植手術、短期のリハビリ、保険等すべてがそろって、イチキュッパ! 本来、三百万円のところを、百九十八万円で簡単に別人に変身することができます。

そしてそれだけじゃないんです! 今ならなんと! 人格にかかわる大脳だけでなく、運動にかかわる小脳まで移植できてしまうのです! しかも料金そのまま! 頭と性格を良くして、しかも運動神経バリバリにまでしちゃえるのです! 今がチャンスなのです! ぜひこのチャンスをお見逃しないように! まずは、「tannakaken@gmail.com」にメールを!

解説

当時使っていた小説投稿ページの機能に「文字の左寄せ・真ん中寄せ・右寄せ」という左寄せ以外使うわけない機能があったので、真ん中寄せを無理やり使おうと思って書いた小説。

使いたい機能が先にあって、それを使って小説を書こう、という考え方はよくする。

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