この小説の読み方
私は自分の小説をできる限り多くの人々に読んで楽しんでほしいので、この小説の読み方を書こうと思いました。本来小説は勝手に読んで楽しくあるべきものですが、ある種の小説は特殊な読み方が必要であったりするがゆえに、それが分からない読者にはうまく読めなかったりするものです。そこでまずこの小説の読み方からこの小説を始めようと考えたわけです。他の分野を鑑みても、たとえば理想のゲームには説明書は要らないかもしれませんが、実際には多くの優れたゲームの中にも分厚い説明書を持っているものがあるわけです。それならばなぜ小説に説明書がないのでしょうか。ペンギンブックスを読むと分かるのですが、西欧では小説の解説はイントロダクションとして、最初についているのです。もちろん核心部分はそこでは書かれていないのですが(日本のミステリーの文庫で、前書き読むとオチが分かるものがありましたが)そこで大体の予習をしてから、本題に入ろうという寸法なのです。もちろん、おれに説明書なんて不要だ、という方がいたら読み飛ばしていただいて結構です。
さて、まず皆さんに言っておかなければいけないことは、これは小説だ、ということです。なぜそんなことを説明しなくてはいけないかというと、たとえばもしこれを小説ではなく、たとえば壁紙のデザインと同じような模様だと、もしくは単なる染みだと思っている人がいたら、この小説を読もうとはしてくれないかもしれないからです。何が描いてあるのか分からないけども、もしかしたら遠くから見ると何かが見えてくるのかも、と考えているのかもしれません。その人たちにこう言いたいのです。これは染みではありません、小説です。だから、読んでください、と。また、これは模様だろうか、複雑な迷路だろうか、それとも文字なのだろうか、と悩んでいる方がおりましたら、これは小説ですので、迷わずお読みください。
次に説明しなくてはいけないことは、この小説は日本語で書かれている、ということです。だからもしあなたが日本語が読めないとしましたら、あなたの知り合いで、日本語が読めそうな人、もしくは日本語が読めそうな知り合いを持っていそうな人を探してください。そして、日本語には縦書きと横書きがありますが、この小説は横書きです。もしいまあなたが縦に読んでいるのなら、その読み方は間違いですので、今すぐ横に読んでください。横書きとはもう少し詳しく書くと、一番上の行の、一番左側から読み始める読み方で(もしあなたがアラビア文字しか読めずに右から読み始めてしまった人だとしたら、文章が理解できなくて、さぞ不安になったでしょうが、このような小説の読み方が最初についていれば、そのような失敗もぐっと減り、最初に帰って左から読み始めれば万事解決となるわけです)、「私は自分の小説を」という部分から一字ずつ読んでいき、行の最後「書こうと思い」にたどり着いたら、一つ下の行の一番左「ました。」に移り、また一字ずつ読んでいくのです。「。」があったときは、そこで文章が終わり、次の文字からまた次の文章が始まります。簡単でしょう。うまく覚えられるか心配な方も安心してください。何回か読んでみているうちに、自然に体が覚えてくれます。
次に文字ですが、文字の一覧表を下に挙げておきます。すでに使った文字も多いですから見覚えがあるものもあるはずです。
(ひらがな)
あいうえお
かきくけこ がぎぐげご
さしすせそ ざじずぜぞ
たちつてと だぢづでど
なにぬねの
はひふへほ ばびぶべぼ ぱぴぷぺぽ
まみむめも
や ゆ よ
らりるれろ
わ を
ん
(カタカナ)
アイウエオ
カキクケコ ガギグゲゴ
サシスセソ ザジズゼゾ
タチツテト ダヂヅデド
ナニヌネノ
ハヒフヘホ バビブベボ パピプペポ
マミムメモ
ヤ ユ ヨ
ラリルレロ
ワ ヲ
ン
よみかたは「あ」は「あ」と読みます。「い」は「い」と読めばいいわけです。読者の中にはこの明らかな法則性にもう気付いた方もあるでしょうが、予想の通り、ほとんどの文字は文字通り読めばいいのです。簡単でしょう。ただし、名詞の後に付いた「は」と「へ」はそれぞれ、「わ」と「え」と読みますのでご注意ください。あと「を」はいつも「お」と読みます。カタカナは対応するひらがなと同じように読むので、まずはひらがなを覚えましょう。文章の中に出てくる、ひらがなでもカタカナでもない複雑な形をした文字は漢字です。漢字が読めないときは漢和辞典を参照してください。
文字に関していままで説明したので、つぎは読み方だけでなく内容のほうにも少し突っ込んでいきたいと思います。まずこの小説には何が書いてあるかですが、この小説にはこの小説の読み方が書いてあります。あと、この小説に何が書いてあるかも少し書いてあります。どうしてそんなことを書いたかというと、この小説をできる限り多くの人に読んでほしいからで、この小説の読み方が分かればみんなこの小説を読んでくれるかもしれないと考えたからです。
もうこれで、皆さんにもこの小説の読み方が分かったでしょうから、ここまで読んでくれた皆さんにはもう何も言うことはありません。安心してお読みください。
(なお、最後まで読んでも、この小説を読めないという方がおりましたら、右下の「Κ」の文字をクリックして、メールをしてください)