淡中 圏の脳髄(永遠に工事中)

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部屋に必要なもの

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部屋に必要なもの

部屋に必要なものとはなんだろうか。

私は数学科出身なので、こういう時にどうしても「ある存在物が部屋であるために必要なもの」を想像してしまいがちだ。なので今回も「内部の空間」と答えてしまった。もし内部の空間がなければ、それは部屋ではなく、ただの物質の塊だ。

しかし、この答えのせいで随分苦労させられた。内部の空間のないところに内部の空間を作ろうとして、懸命に穴を掘った。しかし穴を掘ると、掘って出た物質をどこに置くかに困る。

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常識的に考えればその物質を置くのにまた空間がなくてはならない。当然その空間を作るためにまた掘らなくてはいけない。そしてその時にまた出た物質を置くためにまた掘らなくてはいけないのだ。これでは堂々巡りで、いつまでたっても内部の空間ができない。

しかもさらに悪いことに、意味もなく穴を掘ったことのある皆さんにはよくお分かりのように、穴を掘ると出た物質は空気を含むことにより穴自体よりも大きくなってしまうのだ。

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必要な空間は掘れば掘るほど大きくなっていくにも関わらず、内部の空間は全くできない。大きくなってしまった物質の分の負債が溜まっているので、内部の空間はむしろマイナスになっていると言ってもいいくらいだ。

ここで私は最初の問題を見直してみた。もしかしたらこれは「部屋を運用するために必要なもの」という意味ではないだろうか? そうだとしたら、そもそも部屋は最初から存在していることが前提になっているのではないか? 私は無駄にした時間を取り戻そうと、部屋を見回して何が必要か懸命に考えた。家具も必要だろう。殺風景なのもなんだから飾りも多少必要だろう。情報機器の類も必要かもしれない。

しかしそれらを買いに行こうとしたときに、どうやって買いに行けばいいのだろうかと私は立ち止まらざるを得なかった。なぜならその部屋にはまだ何もなかった。出口すらなかったのだ。

そうだ、部屋を運用するためにまず必要なのは出口だ。出口がなければ、部屋から出ることができないので、部屋に入れるための何かを買いに行くことすらできないのだ。

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しかし出口をどうやって買いに行こう。出口を買いに行こうにも、買いに行くための出口がないのだ。

また私は四方を囲むのっぺりとした壁に同時にぶつかってしまったようだ。

しかし、現代というのも捨てた時代ではない。通販という手がある。私は通販で出口を注文した。窓もないから昼も夜もわからないが、しばらくして人の気配が部屋の外にした。

「すみませーん。荷物をお届けに参りました。ええっと、どこから入ったらいいんですかね、これ」

しまった! なんというだろうか! 迂闊にも私は、入り口の存在を忘れていた。出口を設置するためには部屋の中に入らなくては行けないが、そのためには部屋の外側に入り口を設置する必要がある。

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「あれえ、どこだろ。あ、もしかして、これか?」

困惑している配達員の声が聞こえる。彼は何に気づいたのか。それを理解したとき、私は壁を叩いて懸命に彼を止めようとした。しかし、私の叫びも虚しく、

「ちわーっす……」

ドアの開く音とともに、彼の声はどこか遠くへ消えていってしまった。出口からどこかへ出て行ってしまったのだ。

私はしばらく彼を呼び続けたが、諦めて入り口を通販し直した。

「その入り口を設置して中に入ってきてください。あと、そこに出口が落ちてませんか?それも持って入ってきてくれると嬉しいです」

こうして部屋に入り口と出口ができて、私の部屋はようやく部屋らしさを手に入れた。

しかしその出口のドアを開けるとき、私はいつも考える。あの配達員はどこに消えたのか。今どこで生きているのか。このドアを開けたとき、彼が出ていったどこかに繋がっていたりしないものか、と。

解説

ipad pencilを買ったので、挿絵が簡単に描けるようになったよ。

これは絵じゃなくえ図だけど。

絵の練習しなくちゃね。

知り合いの呟きを聞いて、思いついたことを適当に書いた作品。

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