ビクトリー・ヒューマン・リソース 営業一課 営業
佐藤 俊哉
一時期、ビジネスパーソンの世界に大量の偽名刺が出回ったことがあった。
後に明らかになったことによれば、それは数人の小学生たちの仕業であったのだ。
彼らはできるだけ老けた友達を変装させ、童顔で背の低いセールスマンとして様々な場所に潜入させ、ビジネスパーソンと偽の名刺を交換させたのだ。
犯人たちのほとんどは捕まり、職員室で先生に尋問された際に、動機を告白した。
その結果、その時期、複数の小学校で「名刺バトル」が流行っていたことが判明した。
彼らは、手に入れた名刺でデッキを作り、その「格」やその組み合わせで作った役でバトルをしていたのだった。
最初は親の名刺や、親が持っていた名刺で行っていたものの、それではデッキの構成の自由度が限られていたために、偽セールスマン作戦が同時多発的に決行されたのだ。
しかし、名刺交換している相手が自分の小学生の息子だと気づいた親がいたことにより計画は発覚し、次第に終息していってしまった。
だが、ある噂が巷間に絶えない。
その噂によると非常に老けた小学生が一人だけいまだにバレずに活動を続けていて、ビジネスパーソンの中で他にない発想を持った新星として頭角を表しているというのだ。