読書感想文
ぼくは、本を読むのがきらいです。なので、読書感想文もきらいです。でも夏休みには読書感想文を書かなくてはいけません。そのためには、本を読まなくてはいけません。どうしたらいいのでしょうか。
そうなやんでると、どうやってみんなは読書感想文を書いてるんだろうか、と不思議に思えてきました。そういえばぼくはほかのひとの読書感想文を読んだことがありません。それはそうです。本を読むのもきらいなのに、ひとの読書感想文なんて読むでしょうか。プロの書いた本なら読めばおもしろいのかもしれないと思えるけども、小学生の書いた読書感想文なんて、おもしろいはずありません。
でも、そこでぼくは気づきました。どうせなにか読まなくてはいけないんだ。だったら、ひとの読書感想文を読んで、その感想を書けばいいじゃないか、と。読書感想文を読んで、その書きかたをまねして、その読書感想文の読書感想文を書けばいいのです。これなら一石二鳥です。
しかし問題がひとつありました。その読書感想文はどこで手にいれればいいのでしょうか。ぼくは友達がいません。なので、読書感想文を見せてくれるひともいないのです。
そうなると、読書感想文を手にいれる方法はひとつだけになります。自分で書くしかないのです。
でも、これでは話がくるりともとにもどってきただけです。そもそもぼくは読書感想文を書くことができなかったからこまってるのです。
そこで、僕は気づきました。そうだ、くるりだ、と。この話がくるりともとにもどってきたように、この読書感想文もくるりともとにもどってくるしかないのです。
つまり、ただの読書感想文の読書感想文ではなく、この読書感想文の読書感想文を書かなくてはいけないのです。
ぼくはぼくがここまで書いた読書感想文を読んで、よし、と思いました。はじめのほうはなかなか話がはじまらなくて、いったいなんの話なんだろうとじりじりさせられますが、それでも読書感想文がなかなか書けないことになやんで、いろいろな方法をかんがえているところは、すごく共感できます。いきなり友達がいないと書いてしまうところはびっくりしたけど、僕も同じなので少し泣きそうになってしまいました。そして、とうとうこの読書感想文の読書感想文を書こうと思いつくところは、ほんとうに感動しました。なんて頭のいい思いつきなんだ、と自分でも感心しました。話がくるりともとにもどってくることからそんなことを思いつくものなのでしょうか。
ところがそこからは少しこまってしまいました。この読書感想文の作者は自分の書いた読書感想文をよんで感想を書きはじめるのですが、この作者はなんと自分の書いた読書感想文をほめはめてしまうのです。ふつう、自分の書いたものを自分でほめるでしょうか。ぼくにはよくわかりません。でもやっぱり、自分が書いたばかりのものを読んで、共感したり、自分も同じだと泣いたり、頭がいいと感心したりするのはふつうじゃないと思いました。
そこからさらに読もうとすると、またおかしなことが書いてあります。さっき自分の読書感想文をほめていた作者が、今度は自分の読書感想文をふつうじゃない、と言い始めました。もしかして、この読書感想文の作者は頭がおかしくなりだしているのでしょうか。おかげで読んでいるぼくの頭までおかしくなりそうです。そしたらほんとうに作者が、頭がおかしくなりそう、と書いててわらいました。
でもわらってるときではありません。ぼくはとうとう読むのが書くのに追いついてしまいました。そうするとぼくは、なにも書いてない紙を見て、読書感想文を書かなくてはいけません。なにも書いてないことのほかに、なにを書けばいいのでしょうか。でもなにも書いてないと書いてしまったら、もうなにか書いてあるからうそになってしまいます。でも、なにも書いてないのに、なにか書かれていると書くのも、うそな気がします。いったいぼくはどうしたらいいんですか。
ぼくがこの読書感想文を読んで思ったことは、この読書感想文を書くとあたまがおかしくなるってことです。あと、なにかが書いてあると書いてもうそになるし、なにも書いてないと書いてもうそになるんだから、どのみちうそを書くしかないのです。つまり、この読書感想文を書くとうそつきになります。あたまがおかしくなったり、うそとつきたくなければ、この読書感想文を書かないのがいちばんです。つまり、この読書感想文は書かないほうがいいのです。でも、もうおそいですね。ぼくはこの読書感想文をもう書いてしまったのですから。ぼくはもともと読書感想文なんか書きたくなかったから、ぼくはわるくありません。これは先生のせいです。先生がぼくに読書感想文なんか書かせたから、ぼくはあたまがおかしくなったし、うそつきになったのです。そしていま気づいたんですが、言い訳ばかりするし、人のせいにするし、わがままにもなってます。これも多分先生のせいです。べんしょうしてほしいです。
ぼくは、この読書感想文は、もう2度と書かないときめました。めでたしめでたし。